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コウモリの仲間

概要

中央火口丘の米塚(954m)北側山麓一帯にはいくつもの溶岩洞(溶岩トンネル)が集中していて、コウモリの格好のすみかになっています。
洞穴性コウモリにとって洞穴は、ねぐらであり、冬眠場所であり、繁殖場所です。
コウモリは、通常これら3つのそれぞれの目的にあった専用の洞穴を3つ以上持っていて、それらを季節的に移動しながら順に使い分けています。
しかし、なかには大きい洞穴で3つの条件をすべて満たしている場合もあり、そのような洞穴では年中コウモリを見ることができます。
米塚北側山麓一帯の溶岩洞では、キクガシラコウモリ・コキクガシラコウモリ・モモジロコウモリの3種が確認されていて、キクガシラコウモリは4つの溶岩洞で5月から10月にかけて1~10数匹見られます。また、最大の「こうもり穴」(洞長90m、阿蘇市永草笠石)ではモモジロコウモリと混生してコキクガシラコウモリの約70匹からなる育児コロニーも観察されています。
キクガシラコウモリは、キクガシラコウモリに似ていますが、小さくてその名があり、北海道から九州まで分布していますが、九州では少ないようです。70という個体数は、熊本県内では上天草市姫戸町の権現山洞の100匹に次ぐ大きさといわれています。
このほか洞穴性コウモリではユビナガコウモリも知られており、人家近くではアブラコウモリが多いようです。
また、外輪山西側のカルデラ入口左岸側の「阿蘇北向谷原始林」に近い、南阿蘇村では森林性の珍しいオヒキコウモリやニホンテングコウモリも採集されています。
洞穴性コウモリは夜行性で人には聞き取れない、16キロヘルツ以上の超音波を発しながら飛び、その反響(エコー)で食べ物の昆虫類をみつけ、口で直接捕らえたり、腿間膜ですくい捕ったりしています。昆虫類の種類は季節によって変わりますが、大型のキクガシラコウモリ(体重17~35g)は、左右が上下2つに分かれた硬い骨でできた小さな鼻腔から4本の超音波ビームをまっすぐ発しながら、幅広く短い翼で森林の下層空間をチョウのようにヒラヒラ飛びながら、主に甲虫の仲間やクスサンやスズメガといった大型のガの仲間を捕食します。
中型のユビナガコウモリ(体重10~13g)は、グライダーのように細長い翼で森林の上空を高速で飛びながら、主に体長25mm以下の小型のガの仲間を捕食します。小型のモモジロコウモリ(体重5.5~11g)やコキクガシラコウモリ(体重4.5~9g)は、前2者の中間型の翼で森林の樹官や上空低くをゆっくり飛びながら、また、アブラコウモリ(体重5~10g)は、生体で発した超音波を口の開け方で周波数を変調させながら、人家や川面の上空で、主にカやブユ・ユスリカ・小さなガの仲間などを捕食しています。
このようにコウモリの仲間は、それぞれの種類ごとに少しずつ異なる独特の翼とその飛び方の違いによって採餌空間が異なり、結果的には昆虫を食い分けしながら森林生態系でのそれぞれの地位を得ているのです。

コウモリの保護

食虫性コウモリはどの種も一日に体重の約3分の1に相当する量の昆虫類を捕食しているといわれています。その中には農林業上あるいは衛生上の有害昆虫も当然相当量含まれているはずです。
そこで青森県ではヒナコウモリを保護するためにこうもり小舎を建設したり、野鳥の巣箱ふうのバットボックスを取り付けたりして成果を得ています。
外国でもヨーロッパやロシアではコウモリを保護しており、イギリスなどでは国立公園内に人口のねぐらが設けられています。
日本でのコウモリの仲間にとっての最大の脅威は、自然林の減少や農薬の空中散布などによる餌となる昆虫類の減少と汚染です。

溶岩洞の動物

溶岩洞(溶岩トンネル)は、流動性に富んだ溶岩が冷却固結する際、まだ熱く溶融状態にある内部の溶岩が、すでに固結した表層部を破って流出した結果できるトンネル状の空間です。
富士山麓のものがよく知られ、奥行30m以上のものだけでも80個以上あるそうです。
阿蘇では、中央火口丘の米塚(954m)の北西方向から北方にかけての地域にいくつも集中していて、土地の人たちは「風穴」と呼んでいます。
これは米塚の基底部から流出した流動性に富む玄武岩質溶岩に形成されていて、主なものだけでも約10ヶ所あります。
溶岩洞は、コウモリのほかにも洞穴性動物の格好のすみかになっています。
できた当初は動物にとって無機質な環境だった溶岩洞もコウモリによって洞外から有機物(コウモリの糞)が持ち込まれると、それを栄養として洞穴性動物の生態系が形成されます。
阿蘇の溶岩洞では、これまで昆虫類7種、多足類5種、クモ類14種などが確認されており、ほかの石灰洞などと共通する種も多いのですが、アソメクラチビゴミムシのように固有種もおり、阿蘇が模式産地になっているヤマリュウガヤスデやエダオビヤスデ、また洞穴産として日本で最初のヨロイヒメグモやホソテゴマグモなども生息しています。
洞穴性動物は元々土壌動物といわれているものから進化したものが多く、溶岩洞は石灰洞に比べて生成年代が一般に新しくて明確なので、洞穴性動物の進化・分布を調べるうえで貴重な資料となっています

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カテゴリ : 阿蘇の自然
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