ホーム > 唱えごと

唱えごと

 私たちは日々平和な生活を願っています。しかし、時には思いもかけない出来事や災難(さいなん)が降りかかることがあります。こうした場合、その災難から逃れ、大事に至らぬよう天地に声を出し、唱えごとをしてお祈りをしました。これを「唱(とな)えごと」といい、阿蘇地方ではよく使われてきました。それでは、この唱えごとは、どんな時に使われていたのでしょう。

 なお、一般に唱えごとは「うたよみ」との言葉ですが、必ずしも31音ではありません。儀法(ぎほう)の例として、北坂梨(きたざかなし)では必ず唱えごとを3度唱えて最後に「アブラウ(オ)ンケンソワカ」との真言(しんごん)を唱え、口から息をフッフッと出して吹きかけます。また、唱えごとにより「こん歌で理詰(りづ)めにしますたい」とは、その頃の宮地のお年寄りの言葉です。

身体に関するもの

夢に関するもの

衣(ころも)に関するもの

動物に関するもの

異変に関するもの

その他

参考

くらしのあゆみ 阿蘇 -阿蘇市伝統文化資料集-

 この唱えごとを『肥後国阿蘇郡俗信誌(ひごのくにあそぐんぞくしんし)』という本にまとめられたのは、昭和8年(1933)ごろに阿蘇高等女学校(現阿蘇高等学校)の教諭として勤められていた、大阪府の八木三二(やぎさんじ)先生です。先生は阿蘇郡内の町や村を回って、多くのお年寄りや村人に会って唱えごと等をよく調べ、これをまとめられたものです(今回掲載しているものは言い回しを少し変えています)。
 先生は、将来世の中の移り変わりや文化の発展などにより、こうした唱えごとが死語(しご)となり、使われなくなるだろうと心配されてまとめられました。今のお年寄りたちが子どもの頃は、何かよくないことがあると祖父母や父・母が一緒になって唱えごとをして、お祈りしてもらったそうです。
 ここに、改めて八木先生のご苦労に対しまして、感謝(かんしゃ)の念(ねん)をささげたいものです。

カテゴリ : 生活

このページのURL:

TOP