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地下水流

概要

阿蘇谷とその周辺の山地には年2500㍉以上の降水量があります。これらの降水は、地表を流れる河川となって大部分が立野火口瀬から有明海へと流れ出しますが、一部はカルデラの中で厚い火山灰土から地下浸透し、豊富な地下水となります。また、山腹で浸透した水は、低地部では中央火口丘と高度差があることと、上部の厚い凝灰岩層などで加圧されているため被圧帯水層となっています。
阿蘇カルデラ内の地下水については、広域的な地下水流動の調査がなされていなかったため、全体像はほとんど不明のままでした。しかし、平成5年度に熊本県によって阿蘇谷地域の地下水基礎調査が実施され、その全域で一斉測水調査が行われました。その結果、阿蘇谷の広域的な地下水流動の全貌が明らかになりました。下の図は阿蘇谷の地下水位の等値線と地下水の流動方向を示したものです。

阿蘇五岳から黒川の低地へ

高岳や中岳などの中央火口丘山腹斜面や山麓部では、地表を流れる表流水はほとんど見られません。これは降水の大部分が地下に浸透している結果です。浸透した地下水は扇状地の末端付近で被圧水となり、自噴するようになります。
自噴井戸は、おおむね国道57号の北側にある。阿蘇谷における帯水層が、カルデラ底に埋積した砂層、礫層、及び中央火口丘からの溶岩流などです。
阿蘇谷での地下水位分布は全体として緩やかな水面勾配をしています。これは地下水位の高低を示す数字にあまり差がありません。しかも、水位等高線の間隔が開いていることから読み取れます。これが第一の特徴です。そして南の中央火口丘側から西南西-東北東にかけてほぼ等間隔の地下水位等高線が、東側の一の宮町から西の阿蘇町方面に向かって低くなるような形で引かれ、この線はカルデラの北外輪山下の黒川の低地付近まで押しつけられています。阿蘇谷の地下水外輪山の地下から流出する水の力が弱いため、中央火口丘に降った雨が浸透して地下水となり阿蘇谷北部の黒川付近まで地下水が流出していることを示しています。また、外輪山の直下まで南側の中央火口丘からの地下水が来ていることは、外輪山の下から阿蘇谷地下の帯水層への地下水供給は少ないことを意味しています。つまりこの外輪山方面からの地下水は、大部分がカルデラ壁の中腹で大量の湧水となって流出し、カルデラ底の地下まで流れこむものは少ないと推察されます。
一の宮付近の地下水の流れは、高岳などの中央火口丘山腹で浸透した雨水が坂梨、宮地から北の中通方面へ流動し、ここからさらに黒川沿いに西へ流動して阿蘇町内牧付近に至る流れとなっています。

内牧から南西へ流出

阿蘇市黒川集落付近では、中央火口丘山腹からの地下水が北西方面に流動しています。そして東部の一の宮方面から流動してきた流れと内牧付近で合流しています。さらに内牧付近ではカルデラの外輪壁が大きく北側へ入り込んでいるため、北側の湯浦付近から南の内牧中心街方面への地下水の流れ込みも局部的にあります。この内牧付近には緩やかな水面勾配が見られ、東部の一の宮方面から流動してきた地下水はこの一帯に集まり、ここから南西に向きを変えて阿蘇市赤水から南阿蘇村立野火口瀬方面に流出していくものと推定されます。

熊本地域の地下水

熊本地域とは、阿蘇外輪山の西麓台地から熊本平野の低地部にかけての地域で、熊本市とその周辺の15市町村の範囲を指します。この熊本地域は日本を代表する地下水に恵まれた地域で、特に人口66万人の熊本市は上水道の水源のすべてを地下水に依存しているほか、水前寺や江津湖など大量の湧水が見られる景勝地も多い。この理由は、

  1. 阿蘇山の西外輪山麓の地下に大きな地下水盆が存在
  2. 阿蘇火山の噴出物である浸透性・貯留性の高い地層が分布
  3. 年間2000~2500㍉という豊富な降水量がある

この3つの条件がこの地域に、自然によって仕組まれているからです。つまり、熊本地域の人々が普段何気なく使っている地下水阿蘇山によって育まれたものです。
阿蘇山の西外輪山からそこに連なる西麓台地一帯に降った雨は、黒ボク、赤ボクと呼ばれる阿蘇火山の新規の火山灰土壌から浸透し地下水となる。本地域の水文地質は、地下水の入れ物である地下水盆を形作る「変成岩類」「御船層群」「先阿蘇火山岩類」などの基盤岩類と、その中の地下水を含む地層である帯水層とに分けられます。この基盤岩類は、阿蘇西外輪から右回りに益城、御船山地、雁回山、宇土半島、金峰山塊へと菊池台地から熊本平野の地域をぐるりと取り囲む山地と、託麻台地の小山山、戸島山から北西方面に植木町の岩野山にかけての小さな孤立丘がこれにあたります。この大きな地下水盆の中に小さい凹地(小地下水盆)が、植木台地、白川中流域、益城町付近の木山川筋に見られます。主要な帯水層は、主に菊池台地、植木台地、白川中流域、益城町付近の木山川筋にみられます。主要な帯水層は、主に菊池台地、植木台地、託麻台地等から熊本平野の広い範囲に分布する「阿蘇火砕流堆積物」、「砥川溶岩層」、「未区分洪積層」、「島原海湾層」などです。また、台地の上に比較的薄く分布する「段丘堆積層」も、浅層の主要な帯水層となっています。
熊本地域の地下水は、大きくみて比較的浅いところに分布する第一帯水層と、深層の第二帯水層と分けることができます。第一帯水層は、段丘砂礫層、島原海湾層およびAso-4火砕流堆積物などからなる浅層の帯水層で、地表より数㍍から20㍍程度の深さに水位があり、台地部においてはほぼ地形にそって流動し、水前寺、江津湖などの保田窪面の段丘崖では、砂礫層中から湧水として流出しています。第二帯水層は、一般的には上部の地層により被圧化しており、段丘、丘陵部ではAso-3以下の火砕流堆積物とAso-1とAso-2の火砕流の間に挟まれる砥川溶岩層などから構成されます。この砥川溶岩層は、普通輝石安山岩からなり多孔質で割れ目の多い岩質なので極めて浸透性の良い帯水層となっており、熊本市東部の江津湖から嘉島町井寺周辺では一大耐水帯を形成しています。また、平野部では島原海湾層よりも下位の未区分洪積層の砂礫に富んだ部分が、第二帯水層を構成しています。熊本地域では、帯水層の規模及び能力とその利用の実態から、第二帯水層が主要帯水層となっています。
当地域の深層地下水は、阿蘇西外輪山からその麓に連なる菊池台地一帯でかん養されます。
そして白川中流域の「地下水プール」に一時貯留された後、ここから南の託麻台地および高遊原台地方面に進み、熊本市の江津湖付近で南部の緑川方面からの地下水の流れと合わせて、西の熊本平野を経て有明海へ流出すると考えられています。

参考

阿蘇一の宮町史 阿蘇山と水

カテゴリ : 阿蘇の自然
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