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天狗孫兵衛(てんぐまごべえ)
更新日: 2010-03-20 (土) 17:04:36 (5122d)
孫兵衛ちゅう男が中岳(なかだけ)麓(ふもと)の扇谷(おうぎだに)まじ、たきもん取りに行ったときのこったい。孫兵衛は身軽な男で、岩から岩へひょいひょいと飛び渡りながら、山道ば登って行かした。扇谷にゃ昔から天狗(てんぐ)が住んどって、そん様子ば上ん方から見とらしたったい。天狗は
“おれんごつ、身軽な男のおるこたあおるばい。”
そげん思ううち、声かけらした。
「おいおい、お前は人間だろ。そぎゃん身の軽かもんな見たこつのなか。」
天狗はえろう感心して、孫兵衛と友達になったげなたい。ある日んこつ、孫兵衛は葬式(そうしき)の揚(あ)げ豆腐(どうふ)ば買いに出かけたそうな。帰り道に仲良しになった天狗にばったり出会うたったい。
「今なあ、江戸(えど)じゃあ大火事の起こっとる。火事と喧嘩(けんか)は江戸の華ちゅう言葉もあるじゃろうが。ちょい
と見とくとも、後学(こうがく)のためち思うばってん、どぎゃんな。あんたも一緒に行ってみんかい。」
天狗に誘われち、孫兵衛もその気になったもんで、買うたばかりん揚げ豆腐ば、松の枝にちょいと引っかけて天狗の背中にからわれたそうな。天狗ちゅうのは神通力(じんずうりき)を持っとるんで、江戸までひとっ飛び、飛んでいってしもうた。
揚げ豆腐買いに行った孫兵衛が、いつまでも帰って来んもんだけん、皆いらいらしとった所に、澄(す)まし顔で孫兵衛が戻って来て
「江戸の火事はすごかばい。ちょいと今、見てきたばってん、あん火の具合じゃ、まだ一時ゃ治まらんばい。」
「何ば寝ごつば言うとるかい。ふざけとる場合じゃなかじゃろが。」
村んもん達がそげん言うと
「ほんな話したい。江戸じゃ隣のおっさんに出会うたばい。」
孫兵衛の言うごつ、何か月かして隣のおっさんが帰ってきて、江戸で孫兵衛に会うたこつば話したもんで、村んもんたちゃ「天狗孫兵衛」てち呼ぶごつなったちゅう話たい。
参考
索引 : て
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