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彦しゃんの傘

民話

彦しゃんの傘

彦しゃん(彦一)が、

「あたしゃ、すばらしい傘ば持っとる」

「天気のええ時や独りでにこうつぼまる、天気の悪い時や独りでにこぅやってパーツと開く。そういう傘を持っとるです。」

そればあつちこつち言いふらしたもんだけん、マツイの殿さんな、

「そぐあん珍しか傘があんなら、いっちょうわけちもらおう」
ち。

で、彦一つあんをお城に呼んで、

「ああた、えらいその素晴らしい良か傘を持っとるちゆうね。

天気の良か時やつぼまる。雨が降る時や独りでに開く」ち。

それから、

「はい、その傘はああた、生きとるけん、もう必ず天気の良けりや独りでに、パッとこうすぼまりますたい。」

「そぎやん素晴らしか傘があんなら、俺いっちょわけちくれい」ち。

「はい、そらうんと金ば貰うなら、わけてあげてんよございます。」

それから殿さんが、「んなら、いっちょ。」

何両か金ばそのやって、してそれば傘ば置いた。

ところが、殿さんがこうつと見とるばってん、雨降ったちや、天気が良かったちや、こうそのつぼまりやせん。

それから彦しゃんば呼んで、

「あクや普通ん傘じゃったぞ。天気が良かったちや、雨降ったちや、いつも靡きもつぼみもせん。」

「あらら、そりや、あん傘は生きとるとば、何んにも食べささだったな。

とぅとうあげえ、傘死んでしもうた。可哀想なことをしたち」

ち言うたそうな。(五六五 生き絵)

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
一の宮町宮地 岩永 寿(出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)


カテゴリ : 文化・歴史
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