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梶屋ケ谷(かじえがだに)のキツネ
更新日: 2010-04-20 (火) 15:31:48 (5113d)
阿蘇山の麓(ふもと)に梶屋ヶ谷という薮(やぶ)がありました。そこは昼でも淋(さび)しい場所で、人をだますキツネが住んでいるというので、人々はめったに近づきませんでした。
あるとき、一人の男がこのキツネをこらしめようと決心して、その谷に出かけていきました。なるほど淋しい所で、人っ子一人見かけません。ふと見ると、すぐむこうの薮で古狐(ふるぎつね)がくずの葉をつんで食べていました。
“キツネはくずの葉を食べて化(ば)けると聞いていたが、今に化けてくるだろう。”
と心の中でつぶやいてじっと待っていました。
すると、一人の琵琶弾(びわひ)きが現れました。昔は、琵琶を弾きながら歌や物語を演(えん)ずる旅芸人(たびげいにん)がどんな田舎(いなか)でも回ってきていました。でも、男はキツネが化けた琵琶弾きだと見破(みやぶ)っていたので、追っかけて捕(とら)えようとしました。
ところが、すたすたと足早(あしばや)に行くので追いつきません。男が走ればもっと速く、ゆっくり行けばそれより少し速くというように、いつも見え隠れして前を進むのです。
しばらく行くと、道ばたの百姓家(ひゃくしょうや)に入って琵琶を弾いて歌い始めました。男が後を追いついて家に入ろうとすると、戸が締りました。
その男は、その家をぐるぐるまわって入口を探しました。すると、障子(しょうじ)があって中から一層はっきり琵琶の音が聞こえてくるのです。
指で障子に穴を開けようとした時、男は白馬(はくば)にいやというほど蹴られました。その男は、いつのまにかキツネにだまされていて、百姓家の馬屋(うまや)の中につれこまれ、白馬の尻の穴を障子と間違ってそこを指でつついていたのでした。
参考
索引 : か
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