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猿の嫁入り

民話

猿の嫁入り

 田ぱ植えにゃんちゅうとに、じいさんの田んぼにゃ水が足らんで困っとった。

なんとか、田は植えたばってん、水が足らにゃあ実りの悪かごつなるもんじゃき、ひとりごつば言わしたったい。

「誰か水の世話ばしてくれんもんじゃろか。毎日たっぶり水かけばしてく守るもんのおっなら、娘ぱ嫁にやったちゃよかばってんなあ。」

じいさんのそん話ぱ猿が聞いとった。

翌日、水回りに行かしたじいさんなたまがらした。田んぼにゃ水がたっぶりかかっとる

「おうりや、こりや不思議、こげん水がいっぱいになっとるたい。誰のしわざかいな。」

すっと、田のくろから猿やつが出て来おって、

「どうかな、じいさん、約束どおり娘ぱ嫁に貰おうたい。あんたの言うたごつ、たっぶり水ばかけたつばい。あさって貰いに行くけんね。」

そげん言うて、山ん中さん入っていっちもうた。

じいさんな囲ってしもて一番姉さんに

「お前なあ、猿んとけ、嫁に行ってはくれふどか。約束ばしてしもうたったい。」

そげん言うと

「誰が猿んとけなんかいくもんかいた。」

ちゅうて相手にせんとたい。そっで真ん中ん娘に言うた。

「お前はどうかい。」

「あねさんの出けんこっあ、おんも出けん。」

そげん言うもんじゃき、一番末娘に頼ましたったい。

「おんな、今まじ可愛がってもろち、こげん太なったつじゃき恩がえしに嫁に行きまっしゅ」

はんどがめとかんざしばもろうて、迎えに来た猿と一緒に山さん行くこっになったった。

猿に、はんどがめばからぁせち、大川の一本橋ば渡る時、かんざしば川ん中さんわぜつ落としたったい。

「あらあら、かんざしば落としてしもうた。はよ取って来てはいよ。」

太か声でおらばたもんじゃき、猿やつはあわてち川に飛びこんだつたいね。

すっと、はんどがめに水がりこんで猿やっあ川ん底さん沈んでしもうた。

 じいさんな、親孝行もんの末ん娘に、しんしょう全部やってしもうたちゅうこったい。

参考

  • くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
     髙橋 佳也


カテゴリ : 文化・歴史
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