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野焼き面積の減少
更新日: 2016-05-26 (木) 18:00:31 (2863d)
概要
阿蘇の野焼き面積が年々減少してきている現実があらためて浮き彫りになりました。その原因は先に述べたように農業人口の減少、ムラ体制の弱体化などが挙げられますが、さらに農業の経営構造の変化も拍車を掛けています。
畜産農家では以前、冬に牛馬に与える粗飼料は採草地で生産される干し草に頼ってきました。しかし近年は、水田転作や畑にサイレージ用トウモロコシの栽培が奨励され、それを冬季の飼料として利用するようになりました。これにより機械による省力化が可能で、土地生産性も栄養生産量も高くなったため、採草地の利用は少なくなりました。
また、牛肉の輸入自由化の波は子牛価格の長期低迷を引き起こし、繁殖農家の減少、ひいては牧野組合員の減少を招き、草原管理の担い手を減少させました。
さらに、失火による補償の問題やそれに伴う牧野組合員の心理的不安も、野焼き減少の背景にあります。例えば、日の尾牧野組合では昭和40年代に、野焼きの火が県有林約3㌶に延焼しました。このため、その保証として新しく杉苗を植え、その後10年間は下刈り作業に従事しなければなりませんでした。組合員たちはこの時の労働の苦しさを今も忘れてはいません。そして、再びこのような延焼事故が起きる可能性のある弱い防火体制を危惧しています。補償条件と心理的不安は牧野組合員に重くのしかかり、同牧野組合ではついに平成6年から約100㌶の野焼き中止を決めました。
このような失火の事例は、ほとんどの牧野組合が過去に経験していることでした。それだけに、すべての牧野組合が野焼きによる延焼事故を恐れ、手薄になった防火体制に強い不安感を抱いているのです。
いくつもの複雑な要因が絡み合い、それぞれが互いにマイナスに影響しながら、野焼き面積は減少の一途をたどっています
輪地切り
輪地切りの労働負担の厳しさも、野焼き面積減少の大きな理由の一つで、例えば、泉牧野組合では牛肉自由化の始まった平成2年頃から、肉用牛飼養農家の減少で組合員が30名から16名に減少。この結果、一人あたりの輪地切りの労働量が増大していきました。
同組合では労働負担の軽減を図り、平成4年から野焼き面積を約26㌶に削減。輪地切りの延長をこれまでの3,000㍍から1,000㍍に短縮しました。この結果、作業員一人当たりの輪地切り面積は15㌃から5㌃に減らすことができましたが、それだけ美しい草原の姿も少なくなったことになります。
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